常備しておきたい薬膳食材

 スーパーでは手に入りにく漢方食材ですが、普段の料理にちょっと加えるだけでイヤな症状を改善したり体の不調を整えてくれる簡単に使える漢方食材を集めました。漢方薬のように苦いとかマズイとかといった、食材自体に特に味がないので使いやすい食材ばかりです。

乾物なので常備しておき、いろいろなお料理に加えてお使いください。エキスが滲み出て簡単に薬膳効果が得られます。


紅花[べにばな]

血の滞りを改善して、気になる婦人科症状を改善

五性:温

五味:辛

帰経:心・肝

分類:活血、理血

生薬名:紅花(こうか)

起源:キク科(Compositae)、のベニバナ(Carthamus tinctorius L.)の管状花

中医学的効能    :活血化瘀、去瘀血、通経、血瘀の生理不順、生理痛、産後腹痛、出血、捻挫、熱性発斑

適応症       :活血通経 血瘀による無月経、月経痛、腹腔内腫瘤など。桃紅四物湯、活血通経湯、紅藍花酒、紅花湯

           袪瘀止痛 打撲外傷による内出血の腫脹、疼痛に。八厘散

臨床使用の要点:   辛散温通し心肝二経の血分に入り、活血通経・袪瘀止痛に働く。血瘀の閉経・通経・癥瘕・難産・死胎・

           産後悪露不行、跌打損傷の瘀血腫痛、瘀血脇痛・癰腫などに適する。

           「多用すれば破血し、少用すればすなはち養血す」といわれ、大量では辛温走散し破血通経に働き、少量

           では舒肝・和血養血する。

こんな体質におすすめ:血瘀

食品が持つ主な作用 :婦人科系の諸症状、元気が無い、 四肢の冷え、 疲れやすい、 食欲不振、 泥状水様便、 内臓下垂、

           子宮下垂、 脱肛、 下痢、 呼吸困難、 咳嗽、 息切れ、 高熱、 口渇、 自汗、 多汗、 多尿、 不安感、

           不眠、 動悸、 健忘、更年期障害、冷え症など

出典        :《開宝本草》紅花の名は《漢書》に初めて載せられ、薬物としては宋代の《開宝本草)に「紅藍花

           (こうらんか)」の名で記載されています。晋代の張華の《博物誌》には、張騫がその種を西域から

           中原へもってきてその後各地で植えられるようになったとあります。食材として使われるのは元代から

           とされています。


紅花はエジプト原産で中国にはかなり古くから伝えられていたようで、唐代になって染料や生薬として本格的に利用され始め、唐代の「本草図経」にその効能が記されています。日本には4~5世紀には伝来していたと言われており、平安時代には盛んに栽培されて、花の色素を染料や口紅として用いられていました。染料にする工程が複雑で手間がかかるため現代ではほとんど利用されておらず、生薬としての価値が見直されており種から採った油はサラダ油としても活用されています。

紅花を上手に使うには、「血瘀」証かどうかを確認すること、そして用いる人の体質と持病に配慮して用量を加減することが大切です。

血瘀体質でない人が、急激に大量に用いるのは出血傾向になりオススメしません。少量ずつカラダの状態を確かめながら使用するようにしましょう。


紅花と同じ作用を持つものでサフランというスパイスがあります。中国名で蔵紅花と言いますが、五性:、五味:、帰経:心・肝です。

サフランは、寒性なので涼血化瘀の作用があります。のぼせたり火照るなど、血熱や陰虚で血瘀体質の人は、サフランがおすすめです。

 染料にも使われる紅花(べにばな)は婦人科系の諸症状の改善に用いられる生薬です。

からだを温めて血を補い、血の滞りを改善して冷えによる生理痛や生理不順、産後の腹痛などを解消します。

また、打撲による内出血や腫れ、痛みを緩和します。 

 

女性特有の血の道証(ちのみちしょう)

 中医学では、「血」の働きは、

1.全身を滋養し営養する

2.精神意識活動の基本物質として神を養う

と考えています。

「血」が全身にたっぷり有って、それが滞ることなく、体のすみずみにまで行き渡ることで、筋肉や皮膚を滋養し、五臓六腑や組織器官の働きが正常に行われ、さらに意識が明瞭で、知覚は敏感で、精神活動は充実して精神状態も安定し健全に過ごすことが出来ると考えるのです。

 

この「血」の働きが悪くなった状態を「血の道証」と言いますが、特に女性は生まれつき「血」と切っても切れない生理体質を担っています。

ですから特に女性は、「血の道証」と言われる、血の流れが滞ったり量が少なくなるなどによるさまざまな婦人科系の症状に悩まさることが多いのです。

  

「血の道証」といわれるのは、中医学の体質分類では、

1.血虚(けつきょ=貧血も含めて血自体が足りていないタイプ、血が不足している状態)

2.血瘀(けつお=血の流れが悪く、からだ全体的にまたはある部分に血の滞りがあるタイプ、血行不良の状態)

になります。

→体質診断チェック をやってみよう。(下にスクロールすると→体質診断チェックが出て来るのでクリックしてチェックシートを印刷して下さい)

血虚血瘀にチェックがたくさんついた人は…血の道証の可能性があります。

 

 14歳で初潮を迎え(女性は7歳ごとにカラダが生長変化すると考えます)、そして、毎月生理で「血」を失い(正常範囲で20~140ml)、妊娠すれば胎児に「血」で栄養を与え、出産後は母乳も「血」で作って授乳します。2人、3人と出産した人は、それだけたくさん「血」を失っていることになりますね。

なので、多くの女性は貧血(ヘモグロビンの数値が低い鉄欠乏性貧血)だと言われますが、中医学では「血」の働きが低下している状態で血虚(けつきょ)と言い、カラダを養えず、肌を滋養出来なくなり、さらに精神状態も不安定になったりします。

 血虚の状態が長く続いたり、ストレスやイライラな毎日が続いたり、また慢性的な冷え症などによって徐々に「血」の巡りが悪くなります。その状態を血瘀(けつお)と言います。

 特に、血瘀タイプの人は、「血」の流れが悪く滞っています。血には鉄分が含まれているので、流れが悪くなって滞ってくると、まるで鉄が錆付いて腐食してくるように、流れが悪いまま放っておくと、頭痛、肩こり、生理痛などが起こり、ひどくなると錆付いて腐るように子宮筋腫、内膜症、動脈硬化、狭心症、心不全、肝硬変、脳卒中などの症状が起こります。

 

血瘀からくると考えられる現代病

慢性咽喉頭炎・高血圧症・常習性頭痛・糖尿病・高脂血症・肥満症・関節リウマチ・SLE・月経前症候群・子宮筋腫・子宮内膜症・変形性膝関節症・ 肩こり・脳卒中後遺症・脳血管性痴呆・肝硬変症・慢性腎炎・反復性膀胱炎・慢性膀胱炎・月経困難症・月経周期の異常・耳鳴り・腰痛症・便秘・不眠症・座瘡・尋常性流質・ケロイド・肝斑・脱毛症・掌臨膿庖症・酒査皮・アトピー性 皮膚炎・慢性湿疹・尋常性乾癬など。

  

病気にならないための絶対条件

 質の良い血がたっぷりあって、全身を滞ることなく巡っていること 

 質の良い血とは、炭水化物やタンパク質や脂質などの三大栄養素のほか、ビタミンやミネラル、アミノ酸など必要な栄養素がきちんと有って、血糖値、血中脂肪、悪玉コレステロールなどの数値が低い「血」で、それが1日1回は全身の細胞すべてに行き渡っていることが大切です

 

 極端に言えば、どんなに悪い食生活でも、どんなに運動不足でも、夜更かししてても、過労やストレスフルでも…「血」の質が良くて、たっぷり有って、滞りなく全身に流れていれば病気にはならないと言えます。

しかし、実際にはこのような悪い食生活や、運動不足や睡眠不足、過労やストレスが「血」を減らし、ドロドロにして流れを悪くしてしまうのです。

 

 そして、中医学では「血」は、陰に属すると考えます(気は陽に属します)。

 夜も陰の時間で、「血」は夜に補われます。ですから、夜更かしや睡眠不足は血を補えず、血虚になり、やがて血瘀を生みます。

特に女性は、生理の時などは出来るだけ早く就寝し、夜更かしや睡眠不足にならないようにしましょう。


  

「紅花(べにばな)」は、こんな方におすすめ

■生理不順や生理痛など月経による諸症状がある方(血瘀、血虚)

■寝つきが悪い方、よく目が覚める、夢が多い方(気滞、血瘀、陰虚)

■イライラしやすい方(気滞、血瘀、陰虚)
■高血圧を予防したい方 (血瘀、陰虚、湿(血)熱)

 

 特に子宮内の血流が悪くなり血瘀になると、生理不順、生理痛、不正出血、子宮筋腫、子宮内膜症などの症状を引き起こすと考えます。
また、子宮内膜が厚くなりにくく、着床の妨げにもなり不妊症の原因になると中医学では考えています。

 

豊富なでんぷんやビタミン・ミネラル

 脂肪酸、脂質、ステロール、リグナン、ネオリグナン、フラボン、フラボノール、フラバノン、ジヒドロフラボノール、カルコン、ジヒドロカルコン、オーロン

赤や黄色い色のお料理ならなににでも使えます

 紅花は、赤い色がアクセントで、料理に使うと黄色っぽく色が付きます。なので、トマトソースやミートソースなど、赤や黄色いお料理に混ぜればどんなお料理にも問題なく使えます。サラダのトッピングやスープなどにひとつまみ散らばせてもOK。蓮の実餡やデザートやスィーツのトッピングなどにお召し上がりいただけます。

 

京都伝統中医学研究所で取り扱っています「台湾産紅花」は、色が鮮やかでとてもきれいな紅花です。

 

紅花(べにばな)を食べることで、滞っている血を溶かし、流れを良くしてくれます。

毎日少量ずつでも摂り続けることで、少しずつ血の道証が改善します。

 



[下処理方法]

特に下処理は必要ありません。乾燥したままの状態で、いろいろなお料理に加えてお使いいただけます。 


※注意事項

 1日使用量の目安 3〜9グラム。 大量で9~15g、少量の和血養血には1~2gぐらい。

 妊娠中(特に初期)や生理出血過多の人は禁忌ですので避けて下さい。(子宮内のものを押し出す作用があり、流産の恐れがあると言われています。)

 逆に出産後の悪露が収まらない場合などには、紅花と黒きくらげなどを合わせて食べると効果的です。

 月経出血過多の禁忌。出血傾向があり瘀帯がみられない場合は用いない。過量し過ぎないように注意。 


おすすめの食べ方

乾燥したままお料理に混ぜてお使い下さい。

蓮の実と紅花の炊込みご飯

蓮の実が栗のようにホクホクしてとても美味しいです。 黄色いご飯になりお弁当やお寿司などに使うと華やかに。2合に3グラムぐらいが目安です。ホタテ貝を一緒に加えてもOK。

紅花酒

紅花を紹興酒や赤ワインに浸けます。おやすみ前に寝つけ酒やお料理などにも使えます。

その他お茶や紅茶などに入れてドリンクとしても。 

トマトソース

トマトソースの中に入れて作り置き、パスタやハンバーグなどのソースなどいろいろなお料理に。カレーなどにも少量混ぜてもOK。

鶏団子などに練り込み

鶏ミンチに練り込んで団子にして鴨南蛮風つけ蕎麦にしたり、餃子やハンバーグに練り込んで使います。

酢豚などにも

酢豚などの甘酢あんかけソースに混ぜたり、飾りつけに上からトッピングで使えます。


薬膳パエリア

エビやイカ、アサリなどの海鮮パエリアに紅花、枸杞の実を混ぜて海鮮パエリアに。



紅花を配合した薬膳茶&薬膳食材、薬膳スィーツ