常備しておきたい薬膳食材

 スーパーでは手に入りにく漢方食材ですが、普段の料理にちょっと加えるだけでイヤな症状を改善したり体の不調を整えてくれる簡単に使える漢方食材を集めました。漢方薬のように苦いとかマズイとかといった、食材自体に特に味がないので使いやすい食材ばかりです。

乾物なので常備しておき、いろいろなお料理に加えてお使いください。エキスが滲み出て簡単に薬膳効果が得られます。


黒きくらげ[くろきくらげ]

五性:平

五味:甘

帰経:胃、大腸、肝、腎

分類:止血 

学名:

こんな体質におすすめ:気滞、血虚、血瘀、陰虚

中医学的効能    :活血涼血止血、毒熱邪気の化膿性疾患、潤肺益胃、利腸、眩暈、肥満、便秘

食品が持つ主な作用 :免疫力アップ、抗菌作用、動脈硬化など生活習慣病予防、傷口の回復、貧血をはじめ婦人科疾患、痔など

 

キクラゲ科キクラゲ Auricularia auricula-judae (ウラジロキクラゲではありません)


 ブナやカエデなどの広葉樹の枯れ木に生えるキノコで、形が耳に似ていることから黒木耳という漢字が使われています。

また食感がクラゲに似ていることから木クラゲと呼ばれるようになったそうです。

 

血管を柔らかくし、浄血作用で生活習慣病予防

 中医学では、病名ではなく今現在の体の状態を「証」(しょう)と言います。

よくある「証」の一つに「肝陽上亢」(かんようじょうこう)と言う「証」があります。

女性が良くなる「証」の一つですが、職場や家事・育児、人間関係などストレスやイライラ、怒りなどの感情が長く続くことによって、肝の疏泄機能(のびのびと気血を全身に送る働き)が低下し、気血の巡りが悪くなり(気滞血瘀)、しだいに熱がこもってきて(陰虚と言って熱はないがのぼせやほてりを感じる)、やがて体内の陽気が首や肩から上の上半身に昇ってきて肩こりや首の張り、眼の充血、めまい、不眠、多夢、自律神経失調などの症状が現れている状態です。

 黒きくらげは、血の余分な熱(血熱)を鎮め、浄化し、血の滞りを改善するので「肝陽上亢」や「気滞」「血瘀」、「陰虚」などの体質の人に特にオススメです。

また、血便や痔などの出血性疾患や、血を補う効果もあるので、貧血の人にもオススメです。 

黒い食材で「腎」を強くする 

 中医学では、黒は水の属性を表していて、五臓では腎が配されています。

なので、黒い食材は「補腎」と言って、黒きくらげをはじめ黒豆、黒米、黒ゴマ、昆布やワカメ、海苔、ひじき、黒砂糖、黒酢などは腎の働きを高めてくれると考えます。

 

 」は、中医学では生長・発育・生殖・老化といった生命活動の根源ともいえる「」に深くかかわっていると考えます。

幼年期から腎の精気が充足していき、歯が生え変わったり、髪が伸びたり、筋骨がたくましくなり、青年期になって増え続けてきた「腎の精気」が、やがて「天癸」(てんき)と呼ばれる物質を産み出します。「天癸」は生殖機能の成熟を促す物質で、天癸作用によって男子は精液を作り女子は月経がはじまり、生殖機能が備わって子供の体から大人の体になります。そしてやがて老年期になると「腎の精気」は衰えていき、髪が白くなり、歯が抜け、骨がもろくなり、生殖機能が減退し体も徐々に衰退してゆくと考えます。

 年齢とともに自然と腎精が減っていくのは仕方がないことですが、夜更かしなど悪い生活習慣をして腎精を浪費(ムダ遣い)してしまうことは出来るだけ避けて、黒い食材を食べて腎精を補うことが老化防止に大切です。

夜更かしや過労、ストレス、冷えなどで、腎の蔵精作用が低下すると腎精不足(腎虚)に傾き、生長発育や生殖機能に影響が現れ、不妊症、脱毛、歯のぐらつき、筋骨無力感などの症状が現れるようになります。

 

 腎精は「先天の元」とも言われ、産まれる時に父母からもらって生まれてきます。父母からもらう腎精が少ないと、生長発育の力が弱く発育遅延になり、「立遅(立つのが遅い)・行遅(歩くのが遅い)・髪遅(髪が生えるのが遅い)・歯遅(歯が生えるのが遅い)・語遅(言葉を話すのが遅い)」など五遅(ごち)や、頭軟(ずなん)、項軟(こうなん)、手足軟(しゅそくなん)、肌軟(きなん)、口軟(こうなん)など五軟(ごなん)と言われる症状が現れます。子どもの発育のためにも、お父さんお母さんはしっかりと腎精を補い、たくさんのせいを子どもにあげて欲しいですね。

 

 「」には、腎陰腎陽があり、腎陰は体の中の陰液の根源で、あらゆる臓腑・組織・器官を潤し、滋養しています。一方、腎陽は体の中の陽気の根源で、あらゆる臓腑・組織・器官を温めて生化する働きがあります。

腎の陰と陽は「水火の宅」(水と火が一緒にある)と言われますが、右の絵のように、ちょうど腰のあたりにお鍋の中には水が入っていて(腎水)、それが火にかけられて(命門の火)いて、温められているイメージです。

火加減がちょうどよくて、鍋の中の水温が36.5℃に保たれていると正常ですが、火が弱くなる(陽虚)と水温はぬるくなり冷え症になるイメージで、逆に火が強くなりすぎると鍋の水は蒸発して体の中の潤いが不足して(陰虚)のぼせたり、火照ったり、肌や髪がカサついたり、便秘になったりと水分不足の症状が現れるようになります。女性の更年期障害は腎陰が不足した腎陰虚状態に傾いていのぼせや火照りが現れます。

 

 この火加減をちょうどよくしているのが「」で、腎陰が強くなりすぎたり、腎陽が強くなりすぎたりしないように、養生することによって火加減を調整することが大切で、食べ物では黒い食材を食べることでちょうどよい火加減に調節しているというイメージです。



カルシウムが豊富

 黒きくらげは、きのこ類の中ではカルシウムが最も多く含まれています。カルシウムの99%は骨や歯に存在し、残り1%は神経や筋肉、血液中にあり神経の安定剤のような働きをしたり、心臓を規則正しく動かしたりするのに重要な役割を果たしています。

カルシウムが不足すると、骨から溶け出しますが、血管に沈着しやすく動脈硬化の原因にもなります。

 その他、エルゴステリン、鉄、ビタミンB1・B2・E、βグルカン、マグネシウムも多く含まれます。

 

新型コロナウイルスの予防にビタミンDが有効…

 最近の研究で、新型コロナ重症者の血中ビタミンD濃度が著しく低いことが研究の結果証明されたそうです。WHO(世界保健機関)でも、上気道炎の予防にビタミンD摂取を推奨していますが、ビタミンDには免疫作用があり感染症に効果的だということが研究で確認されています。

薬膳でも「黒きくらげ」は、免疫力を高め、血を浄化する働きがあるとされていますが、黒きくらげにはビタミンDが豊富に含まれており、日本食品標準成分表(文科省)によると乾物キクラゲ100g当たり128.5マイクログラムで食品の中ではトップクラスです。

黒きくらげは、漢方独特の苦みや臭みなどがなく、どんな料理にも使える常備菜で、中国や台湾では、「西紅柿炒鶏蛋」(黒きくらげとトマトの卵炒め)はお母さんがおかずに困ったときに、素早くできる一品として最もポピュラーな家庭料理です。

 

 野菜炒めや焼きそば以外にも、そのままお鍋やおうどんに入れたり、細かく刻んでカレーに入れたりハンバーグや餃子の種に練りこんだり本当にどんな料理にも使えます。子どもたちやお父さんがコロナに感染しないよう、これからは黒きくらげを使ったお料理を増やしましょう。 

100 gあたりの栄養価
エネルギー 699 kJ (216 kcal)
 
71.1 g
デンプン 正確性注意 2.7 g
食物繊維 57.4 g
 
2.1 g
飽和脂肪酸 0.29 g
一価不飽和 0.33 g
多価不飽和 0.62 g
 
7.9 g
 
ビタミン
チアミン (B1)
(17%)
0.19 mg
リボフラビン (B2)
(73%)
0.87 mg
ナイアシン (B3)
(21%)
3.2 mg
パントテン酸 (B5)
(23%)
1.14 mg
ビタミンB6
(8%)
0.10 mg
葉酸 (B9)
(22%)
87 µg
ビタミンD
(569%)
85.4 µg
 
ミネラル
ナトリウム
(4%)
59 mg
カリウム
(21%)
1000 mg
カルシウム
(31%)
310 mg
マグネシウム
(59%)
210 mg
リン
(33%)
230 mg
鉄分
(271%)
35.2 mg
亜鉛
(22%)
2.1 mg
(16%)
0.31 mg
セレン
(13%)
9 µg
 
他の成分
水分 14.9 g
不溶性食物繊維 57.4 g
ビオチン(B7 27.0 µg



食べ比べれば違いがわかる最高級きくらげ

 京都伝統中医学研究所で取り扱っていrます「台湾産天然黒きくらげ」は、台湾の乾物市場で販売されている中でも最も肉厚の厚い、歯ごたえのある食感で最高級の黒きくらげです。

 

乾燥状態では小粒で軽いですが、水で戻すと大きくなりとても食べごたえのある美味しい黒きくらげです。

他のきくらげと食べ比べてみれば、違いが一目瞭然!

 

厚みが全然違うし、プルンプルン!小さくて食べやすい大きさなのに分厚くて、驚く美味しさ、子どもも喜んで食べますよ~!

 

そのままでもいろんなお料理に使えるし、細かく刻んでもOK。



[下処理方法]

水またはぬるま湯に10~15分間ぐらい浸して戻します。

軸のところが硬いので、気になる方は指でちぎって下さい。

黒きくらげ20グラム入り1袋を水に戻した分量。

他の食材などと一緒に使うので、1人1回分で約5グラムぐらいを目安に。

ボウルなどに黒きくらげを適量入れ、ひたひたになるまで水またはぬるま湯を入れ約10分~15分程浸けて戻します。

柔らかくなったら、いろいろなお料理にお使い下さい。

もどし汁にもエキスが出ていますので、そのままお使い下さい。



※注意事項

 特に注意することはありません。 

 生のきくらげはあまり見かけませんが、皮膚のかゆみや腫れ、痛みを引き起こす成分が含まれるので、必ず加熱調理が必要です。(乾燥の黒きくらげは毒はあり

 ませんので、水などで戻してそのまま使えます)。


おすすめの食べ方

野菜炒めや焼きそばなどの具材や、小さく刻んでハンバーグ、餃子、鶏団子などに練り込んでもOK、卵と黒きくらげをさっと炒めて一品などさまざまなお料理に簡単に使えます。

金針菜と黒きくらげの炒め煮

ゴボウやニンジン、レンコンなどと一緒にきんぴらにしたり胡麻和えなどにも。

 

黒きくらげと小松菜や松の実と金針菜の温かいサラダ

焼きそばや野菜炒めの具にも使えます。

黒きくらげとクルミの佃煮

ウマウマのピリ辛佃煮でご飯がすすみます。

作り方はこちら

黒きくらげと里芋、イカ、椎茸、細切り昆布の煮物

 

金針菜と黒きくらげの酸辣湯

豚肉、豆腐、卵と一緒に酸辣湯。そのほかいろいろなスープの具にもOK。


薬膳お鍋

こちらも手っ取り早く、冬の定番、あらゆるお鍋の具材として。

エキスが出るので子供にも効果的。 




黒きくらげを配合した薬膳茶&薬膳食材、薬膳スィーツ